
俺は、君のためにこそ死ににいく→タイトルに込められた意味
評価☆☆☆☆☆
私がこの作品の存在を知ったのは今から一年以上前に遡る。当時、劇場に見に行った作品の前に予告が流れていたのだ。(と言っても当時はまだ撮影自体始まっていない時期だったらしく満開の桜がスクリーンに映し出され、そこにタイトルと製作指揮 石原慎太郎というティロップが入った簡単なものだった。)その時私はこの「俺は君のためにこそ死ににいく」というタイトルを目にし、「なんてエキセントッリクなタイトルだろう」と気分が少し引き気味なになったことを今も憶えているw それから一年が経ち、つい先程一ツ橋ホールの試写会で観させてもらってきた。内容はかの有名な特攻の母と呼ばれる富屋食堂の女将、鳥浜トメさんが実際に送り出した特攻隊員達の姿を描いた群像劇だ。
物語の内容は以前「ホタル帰る」という鳥浜トメさんのことを書かれた本を読んだことがあるために私には特にこれといって目新しいエピソードは無かった。それに正直言えば映画としての出来も同じ東映が配給しているだけあって「男たちの大和」の焼き直しな感が否めない。その上、出演者が多く、物語の軸になる登場人物が誰なのかも分かりづらい。カメラワークもあまり良くない感じで遠隔で画面を撮るために、全員軍服で坊主頭なので観ている側には誰が誰のか分かりづらい等、細かな点は気にはなった。(ただ大和で口うるさいミリタリーオタクにこき下ろされていた点は大分良くなっておりクライマックスで展開する特攻シーンは日本の戦争映画の中ではかなりのリアリティーとインパクトがあったと感じた。)
けれどもそんな中でも私の心に深く焼きついた印象的だったシーンがある。(*以下激しく(でもないかもしれませんが)ネタばれあり。これから観ようと思っている方はスルーして下さいw)劇中、子犬を抱いた19歳の少年飛行兵がトメに「俺が死んでしまったらもう誰も俺のことなんて忘れてしまうんだろ?」と心の内をうちあけるシーンが出てくる。それに対してトメは「誰もあんたのこと忘れたりするもんですか」と答える。すると少年兵は「本当に?約束だよ。」と涙をためながらニッコリ笑い「俺、まだ19だから残りの30年の寿命おばちゃんにあげるよ。だから長生きしてな。」と出撃して行く。
この台詞を聞いた時、私はこの少年兵に「今の日本はどうですか?俺達が託した未来を大切にしてくれていますか?」と問われた気がして申し訳無さで涙が溢れ出た。
戦後60年以上が経ちあの時代の真実がどんどん忘れ去られようとしている今、私はこの少年兵に「俺達との約束忘れないでください」と言われた気がしたのだ。(まァ正確に言うと何も約束した憶えは無いんだけどw)
けれど日本人としてこの日本の国が彼らのような夥しい死者の上に成り立っている。このことが意識の中から薄れていくのは日常の生活の中で何気なく存在している空気や水、草木、人が存在していく上で必要な全てが有ることが当たり前と何も感じていないことと同じに思えたのだ。
そしてラストシーンまで見終えた私はこのタイトルの「君」の中に彼等が信じた未来、「今」という時代を生きる私達も含まれているのだということに気がついた…。
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